こんにちは。江津湖の真ん中で絶望しているムトーです。
皆さま突然ですが…
スイゼンジノリのことってどんだけご存じです?
私、名前しか知らないんですよ。
それが何なのか、どんな物体なのかすらわからない。これじゃいかんなと思って、何やら「江津湖に自生している」とかいうフワっとした情報を頼りにここまで来たんですが。
来たんですけどね。
わからんばい!!!
てことで今回は
スイゼンジノリを調査したいと思いまーーーーす!
スイゼンジノリマスターがどうやらおく村にいるようだ
色々調べていたところ
このような団体を発見。
早速アポを取って伺った先は、老舗料亭 日本料理おく村。
日本料理おく村 代表取締役 奥村賢(さとし)さん
「今日はスイゼンジノリについてお伺いしたいことがあって…。というよりも、疑問すらわかないほどの知識量なのでまずはスイゼンジノリとはなんぞや?から教えていただければと。」
「そうなんですね。まず!まずお伝えしたいのが…
興味をもってくださってありがとうございます!」
もうスイゼンジノリにとりつかれているレベルでめちゃくちゃ熱く語ってくださいました。
まずはスイゼンジノリの歴史とやらを
「江津湖に行ってもこんな感じ。そしてなんでノリなのに海じゃないのかなって」
「おお!江津湖行かれたんですね。見えました?なんか」
「水面なら。」
「あそこにスイゼンジノリがおるのか、おらんのかって言ったらこれまた微妙な話で。とてもじゃないけど肉眼じゃ見えない。でも偉い教授なんかは「見えないだけでおる”だろう”」っていうレベルですね」
聞くと、スイゼンジノリの起源は、なんと5~7億年前。地球が氷河期だったころ。
まだまだ人間どころか脊椎動物もいなかった時代からいたんです。
「めちゃくちゃパイセンじゃないですか」
「そうよ。ラン藻類(らんそうるい)になるんですけどね。まあ分かりやすく言えばマリモの仲間」
静かにでも確実に熊本の地に自生していたスイゼンジノリ。
この存在が公になったのは、明治時代に入りオランダのスリンガー博士によって「スイゼンジノリ」を発表されてから。とはいえそれまでも細川藩では幕府の献上物として地位を誇っていました。
「だけん、言い方はアレだけど、江津湖くんなら、どこでんあったったい。そんなに珍しいものでもなかったけん」
どこでもあったのになんでなくなったのか
江津湖で水遊びすれば、必ずひっついてくるようなレベルで自生していたスイゼンジノリ。しかし626水害で江津湖が氾濫。もちろん根っこなんて生えているはずもなく、気づけばあんなにあったスイゼンジノリはなくなってしまったのです。
「なくなった?」
「なくなった。」
「え、じゃ今江津湖にあるっていうくだりは…」
「だけん、もう一回環境を整えてるところ。春と秋は調子よかばってん夏と冬があんまりよくないとたい。水温なのか日光なのか。」
その名称から熊本の水前寺にしか自生していないという印象ですが、実はオランダのスリンガー博士が「たまたま」見つけたところが、江津湖だったって訳で、そこにしかいないというものではありません。
九州ではほかに福岡県の黄金川に自生している「川茸(かわたけ)」も同じ品種。
先に話したように、江津湖に行けばどれだけでもあるのがスイゼンジノリでしたから、当時としても「これは大変だ」とはつながらなかったのでしょう。福岡の「川茸」は行政がいち早くその事実に気づいて保護下にあったので、まだ自生しているのだとか。
じゃ幻なの
ここまでの話を聞くともうスイゼンジノリって熊本にないんだなと思いますが、実はあるんです。
益城の養殖場と、ここ「おく村」の敷地内に。
ちっちゃい江津湖を再現させてます。
実は水害の後に絶滅したと思われていたスイゼンジノリ。
今では養殖という技術で再起をかけ細々と生き延びています。
「さすが氷河期すら生き抜いたスイゼンジノリ先輩。気合が違いますね」
「でも、たいがデリケートやけんね。奇跡よ。」
「このままじゃスイゼンジノリがなくなる」ということで、スイゼンジノリを守る会なるものが生まれては消え、生まれては消えするのを見ていた奥村さん。
なぜなのだろうかと考えた結果、今までの守る保護団体というのは募金ありきの動きだったので、いずれ電池が切れてしまう。
長く守れる方法とはと考え
いつか商品化したときに利益が生まれ、その利益で投資者に還元ができる。この方法が最適だという結論になりました。
同じ志を持つ仲間と「水前寺のりくまもとの会」を発足し、養殖そして商品化など幅広く展開されています。
はじめて食べました
知識はついたものの、本物を見たこともないスイゼンジノリ。
なんと「食べる?」ってご厚意でいただけることに。
今回いただいたのは、スイゼンジノリを素麺に加工したものと、そのまんまスイゼンジノリ!
素麺はよく見るまでもなく緑色のブツブツが。
もうね、美味しい意外の表現が見つからない。スイゼンジノリ自体に味は正直ないです。でもなんというのでしょうか。食感が想像の柔らかさとは違い噛み応えがあるんです。そしてトロットロ!
オクラなどのネバネバではなく、トロトロ。
そこに老舗日本料理「おく村」特製のポン酢がのっかるんですもん。これぞ「ああ熊本に生まれてよかったー!!」ってなるのも仕方なし。
トロトロの理由はスイゼンジノリに含まれている「サクラン」のおかげ。これが抽出されたサクランなのですが、知らなければ「なんかいこんゴミな」ってうっかりお母さんから捨てられるパターン。
保水量が10倍とのことですから、化粧品などにも活用されるのも納得です。
スイゼンジノリが織り込まれているパンツも商品化されています。洗うとヌルヌルしそうじゃと思ったのですが
「そうならないように、繊維に織り込んでいるから大丈夫(笑)」
だそうです。安心。
まとめ
なんにでも順番ってものがあるように、先人たちが大事に守ってきたものも我々世代が守っていく順がきているのかもしれません。
「よーわからんけん知らんたいな」っていうのは簡単ですが、それじゃあまりにも寂しい。
本当に相当深いお話になってしまうからと、今回はごくごくライトな部分だけ教わりましたが、もし「気になるな」「食べてみたいな」という方がおられましたら
ぜひ日本料理「おく村」まで足を運び、耳で舌で味わってみてはいかがでしょうか。
スイゼンジノリを豊富に使った「水前寺のりコース」も展開されてますよ!
日本料理おく村
営業時間 | 昼の部 / 11:00~15:00(ラストオーダー 14:00) |
---|---|
定休日 | 不定休 |
専用駐車場 | 6台 |
ホームページ | |
電話番号 | 096-352-8101 |
記事シェア