公立高校では全国初となる「マンガ学科」が設立された熊本県立高森高等学校。
ニュースで、そういう学科ができましたっていう情報は見聞きしたことはあるものの…
みんな現国とか数学とか必修科目しないで漫画描いてるの?
てか卒業後どうすんの??
卒業したら漫画家デビューできるの???
…と疑問がたくさん。
「いらん世話た」と言われればそうなんですが、老婆心ながらとても気になったので
肥後ジャーナル編集部内で「画伯」と称されるライター言(こと)に
マンガ学科で体験授業をしてもらい、気になるアレコレを調べてみました!
まずは高森高等学校マンガ学科をおさらい
創立75周年を迎える熊本県立高森高等学校。
今年度新たに新設された普通科グローカル探究コースと、全国初となるマンガ学科の2つのコースを有する公立高校です。
現在マンガ学科は県外出身者11名、県内出身者29名の総勢40名のクラス。
遠くは沖縄からきてる子もいるんですって。
ちなみに最近CMでよく見かけるこのイラストは高森高等学校マンガ学科の生徒さんが描いたもの。
入学して3ヶ月ちょいで、自分の描いた絵がCMになってんの…?すげえ。
「お待たせしましたあ」
理由も分からず呼び出された言。
「さて言さん。今日はここでマンガ学科の生徒として、コアミックスの堀江社長の授業を受けてもらいます」
「生徒ってことは高校生ですよね。アラサー高校生になりますが合法ですか?あとコアミックスとは??」
「大丈夫よ。合法よ。コアミックスはねー…うーん…北斗の拳の原哲夫先生って知っとる?」
「うっす。ふかわりょうさんの親戚ですよね」
©武論尊・原哲夫/コアミックス 1983
「そう、ふかわりょうさんの親戚でなおかつ北斗の拳で作画を担当した原哲夫先生と」
©北条司/コアミックス 1985
「シティーハンターの北条司先生、アニメ版で冴羽獠役を演じた声優の神谷明さんや…」
©次原隆二/コアミックス 1982
「よろしくメカドックの次原隆二先生、元『月刊少年ジャンプ』編集長の根岸忠さんが参加し、元『週刊少年ジャンプ』編集長の堀江信彦さんが立ち上げた会社がコアミックス。そして今からそこの社長さんであり伝説のジャンプ編集長と称される堀江さんの授業を受けます」
「え、めっちゃすごい人!その方が先生なんですか?」
「いや常勤している先生ってことではなくて、より専門的な知識やノウハウを学べる授業を取り入れるための特別講師みたい」
「すげえ!週刊ジャンプ元編集長の授業!」
友だち100人できるかな
いよいよ生徒さんが教室に入ってきました。
誰か声をかけてくるかなーって思ってたんですが想像以上に驚いたようで、皆、目も合わせてくれない…
ボッチつら
女子高生特有のキャピキャピ感が眩しい…
そんなことを考えていたらあっという間に始業のチャイムが鳴り、いよいよ授業開始です。
コアミックス代表取締役社長 堀江さん
「今日はね、セブンイレブンに置いてある”ボノロン”。この新作を持ってきました。で、何をするかって言うと」
この新作で朗読劇やってもらいたい。
朗読劇を行う題材「森の戦士ボノロン」は、北原星望(=堀江社長)原作、永山ゴウ作画、原哲夫プロデュースによる絵本シリーズ。
今回はまだ発表されていないシナリオで朗読劇を行います。
朗読劇とマンガって関連性があるの?と疑問に思ったのですが、もし今後、編集者や原作者を目指すようになれば、キャラクターがどのような感情で話し、表情をするのかという想像力が非常に大事になってくるのだそう。
そして、それらを自分以外の第三者に伝えるときに役に立つのがこの朗読劇なんだとか。
2チームに分かれ、それぞれお面を作る制作班になるのか、演者になるのかを話し合い担当を決めていきます。
言は演者チーム。さっそく皆で、本の読み合わせを開始。
ちなみにここまで先生の介入は必要最小限。クリエイティブな学科ということもあり自主性を重んじています。
「ぜんたーい止まれ!の後の掛け声ってなんでした?」
「え?なんだったかな。多分いちにっ!だったと思う」
「えっ?福岡は1.2.3.4.5ですよ」
「止まりにくくない?」
全国で唯一の学科ということもあり、熊本県外からきている子も多く、地元あるあるネタが盛りだくさん。
そして普通にマンガ以外の授業もあるんだとか。例えるなら商業や工業の高校と似た感じです。マンガ学科はそこがマンガに対するお勉強ということですね。納得。
想像以上に仲良くなっとる
「ねえみんなマンガ学科に進学を決めた理由ってなに?」
「まず公立でここまでの設備が整っているところって他にないんですよ。液タブ(液晶タブレット)とか1人1個あるし。あとは大学の推薦枠とか考えたらここかなーって」
「うん。とにかくマンガに関する設備とか情報とか、専門学校よりも最新だし深く学べるし、いいよねって感覚」
本当に君たち16歳かね。そこへんの大人よりしっかりしとるわ。
一方そのころ、制作班はボノロンに出てくるキャラクターのお面作り。
堀江社長から渡されたのはまだ文字だけの状態なので、内容を読み理解し、自分が思うキャラクターをそれぞれ描いていきます。
うっまぁ…
数分でこんなに細かく描いたの!?
ちなみに堀江社長はそれぞれの生徒を見ながらも、あーしなさい、こーしなさいという声は一切かけません。
ひたすら静かにウンウンとうなづいていました。
恥ずかしがったらそこで終了
次はいよいよ皆の前で発表です。
言のお面はこれ。
「何の役なのこれ」
「ワイは村人や」
本読みですっかり村人に憑依していたのですが、渡されたお面の顔を見てると確かにリンク。なるほど、原作者とのイマジネーションとの共有とはこういうことか。
いよいよ発表です。
村人モードON!!!
皆も真剣に取り組み
無事終了!
いよいよ巨匠が動く…
「はい、みんなお疲れ様でした~。どうかな、やっぱり皆の前に出ると恥ずかしくて声が小さくなったり思わず笑ったりしちゃったかな」
「まずは制作班から。テキストだけの情報の中で原作者の意図をどんだけ汲めるのかってところなんだけど、実は作品の中に数珠が出てきてたんだよね。多くの人が鬼を描いている中で、そこに気づけたのは1人だけだった。すごくそこは自信をもってください。才能があると思う」
「演者は自分の声とは違う声を出してその役になりきろうとした子もいたよね。そういうことなんだと思います。人に何かを伝えるってことは。ただね恥ずかしがっちゃいけない。自分の作品を人前に出すときに恥ずかしさが前に出てしまうと魅力がなくなるんです。もっと堂々と。もう一度言いますね。自分の作品を世に出すときには恥ずかしがってはいけません」
数多のプロの漫画家と伴走してきた経験則から、どんな作品でも世に出せば賛否両論があることは百も承知。
だからこそ自分が描く作品に対し、まず自分が自信をもっていなくてはいけない。恥ずかしがってはいけない。というところで今回の授業は終了しました。
世界に羽ばたくクリエーターへ
今回お邪魔した熊本県立高森高等学校マンガ学科。
今年度から新しく始まった学科なので、まだ卒業実績等はありませんが、現時点では卒業後は進学を希望している子の方が多いのだそう。
もちろん漫画が好き、描くことが好き!という思いで集まった子たちですから、チャンスがあればプロデビューしたいと熱い思いを胸に秘めている子も少なくはありません。
その想いをここ、高森町発信で叶えるべく、熊本県をはじめ高森町、そして今回授業をしてくださったコアミックスというまさに三位一体の取り組みでバックアップを行っています。
「夢だけ見てても仕方ない」と諦めるその前に、ここでチャンスをつかんでみませんか?
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