気づけば3回目となる「滝室坂トンネル今どうなってる進捗知りたいシリーズ」。
1回目 完成すれば熊本市から大分市まで2時間15分!現在工事中の「滝室坂トンネル」内部に潜入してみた
最後に訪れたのが2020年なのでもう3年前になるんですね。
3年たてばそりゃずいぶんと変わったでしょう、そう思い行ってきたのですが本当に色々進んでました。ぜひご覧ください。
やっと点と点がつながった感
工事の進捗の前にまずはこちらの図面をご覧ください。
今まで「この滝室坂トンネルができたら行き来が楽になるなあ」なんてふわっとしたことしかわからなかったのですが、今回やっと全貌が見えてきました。
濃い緑の線と点線部分が中九州横断道路(予定)。
要は熊本市西区からビャーーーーンって道がつながって大分県の米良あたりまで一直線になるってわけです。
先日肥後ジャーナルでもお伝えしたように北バイパスと西環状線を結ぶ通路はすでに開通済み。まだ西環状線自体は工事中ですが、それが完成すれば、熊本市の交通事情が大きく変わると言っても過言ではありません。
【祝開通!】西環状線と北バイパスを結ぶ道路が開通したので走ってきた動画
その一角を担っているのが、ここ滝室坂トンネルということなのです。
「めちゃくちゃ夢がある話じゃないですか」
「そうでしょう。これだから土木業って面白いんですよ」
今回案内していただく国土交通省九州整備整備局 永松さん(左)国土交通省九州整備局 坂元さん(中)。
謎の帽子をかぶって驚いているのは伊藤(右)です。
前回も前々回も共通しておっしゃてた言葉が「滝室坂の山は本当に難しい」。
それを裏付ける地層について教えてもらいました。
実は滝室坂トンネルって傾斜4度で登っていっているんですが、Aso-1(あそいち)と呼ばれる地層はめちゃくちゃ固いもののAso-2(あそに)では事前に水があふれ出ることがわかっていたりAso-3(あそさん)では、人の手でも軽くつぶれるほどの柔らかい地層だったりと
とにかく固いものと柔らかい地層が混在するうえに、水は出てくるわ傾斜をつけなきゃならないだわでそれはもう大変なんですよ。
例えるならパッリパリのミルフィーユケーキをいかに崩さずフォークを入れるのかってくらい難しい。
「阿蘇の地層すごい」
「そうですね。歴史ある地域ですからね。それでは今では今から出発しますが、あとで分かりやすく”ああここが28万年前の地層だな”ってわかるスポットがあるので見ましょう」
「サラリと言いますが28万年前って人は存在していたのでしょうか」
「いましたよ。えーとちょうどここかな」
北京原人。
まさか生きてて北京原人と同じ土に触れあうことができるとは。
歴史も地学も土木も学べる滝室坂トンネルへいざ!
全長4.8キロメートルのトンネル
いよいよ滝室坂トンネル内部へ潜入します。
ちなみに
2019年は大体100メートル
2020年は大体1キロ
そして2023年は…
まさかの約2.5キロまで進んでました。最終的には4.8キロまで進みますのでもう半分以上進んだことになります。
したがって今まで徒歩で見学だったのですが
車移動。なんだか芸能人になったかのような気持ちです。
かなり奥深く入っていきましたが天井にあるダクトで常に新鮮な空気が保てています。
「さあ着きました。ここが先ほどお話した水を含んでいるAso-2の部分ですね」
上をみたところでもう吹付工事をしてあるので地層は何も見えないのですが
地層に含まれていた水が横に配水されてました。
「Aso-2の水…つまり14万年前の水ってことですね。それを今私は触っている。北京原人と同じ水を…」
「いや多分違いますよ。そこ数年前に振った雨水がしみ込んで出てるだけですね」
なんとロマンのない男なのでしょうか。14万年前の地層でろ過されたんだから、ミクロ単位で見たらきっとこれも14万年前の水なんですよ。知らんけど。
まあ触ったところで普通の水でしたが。
水からミクロ単位の歴史を感じられるほど繊細な手じゃなくて申し訳ないです。
さあここが現段階で最奥部分。
おわかりでしょうか。
あまりにも美しく壁画のようにすら感じてしまう28万年前の地層。
真っ黒な部分が固いAso-1。これは重機でも掘れないほどの固さなのでダイナマイトで発破し進めていきます。
そしてその上にあるのがAso-2、そしてAso-3、白く見えるのは火山灰です。
落ちていた石を比較したのですがもう全然違う。
ちなみに白いほうの石は
ちょっと触っただけでホロっと割れました。例えるなら軽石みたいな感じ。
「これほんと難しいですね。固いほうにあわせると上の柔らかい部分が崩落しますもん」
「そうですね、全国的に見ても難しい山だとは思います」
めちゃくちゃトンネル作りって緻密に計算されているんですよ。万が一なんてあってはいけませんし、とはいえ固いものを掘れば山は動きますし。テレっと作業なんてできないわけです。
みんな頭がいいなあ。
「あれですか。やはり幼少期から砂場のトンネル作りもお上手だった感じで」
「そうですね。子供ながらに計算してましたね。土台が命なのでまずは水分をたっぷり含ませてお尻で固めたりとか…ってあ。隣で発破しますんで耳塞いでてください」
「はっぱ?」
動画ではいまいち音が撮れなかったんですが、ドゴ―――――ンという低い爆発音と火薬のにおい、そして空気が逆流するのが分かりました。
ちなみに発破を行っていたのは現在我々がいる本抗ではなく緊急車両などが通る隣の避難抗。
ここは緊急車両などが使用するトンネルなので完成後も基本的に一般車両が入ることはありませんが、先日無事貫通しました。
あとはいよいよ本抗の開通を待つばかりです。
最新の技術を用いて安全かつ迅速に
完成すれば熊本から大分まで最短2時間15分で通れるようになる夢のようなトンネル、それが滝室坂トンネル。
工事が安全かつ迅速に進むように最新の技術、そして近隣住民への細心の配慮がされていました。
例えば発破等で出る土砂ですが、従来のようにトラックで運び出すとどうしても振動が出てしまいます。
そこで
まずはここで大きな岩を粉砕して
ベルトコンベアーで運び出して
ここまで運んだら
落として
まとめて運び出します。もちろん音がしないように二重の防音扉も設置し極力、振動や騒音が出ないように工夫されていました。
また安全確保もしつつ工期も遅れが極力出ないように
このようにすべてデータ化した「プリズム」を使うことで、効率化を図っているのだそう。
また誰がどの現場で何をしているのかも一目瞭然になったのだとか。
「これを使うことで時間の配分がしやすくなったので、結果残業が減ります。今まで作業の合間、結構手持ち無沙汰になるのに事務作業が終わらず残業ということもあったので。それらが解消できますね」
「ということはサボれない」
「まあ…その分早く帰れますけどね」
難しい工事であるからこそ、現場で働く人の体力面等にも十分に気をつけなくてはなりません。このような最新技術を用いて、本当に疲れていないか?無理をさせていないか?を可視化し、働き方も変えていっているのだそう。
もう半分以上進んだ工事ですが
完成すれば、地元阿蘇の人の生活はもちろん、熊本市から大分市まで、最短2時間15分で行けるようになる重要なトンネルです。
今後も何卒安全第一で!工事頑張ってください!
熊本の建設産業の魅力発信!
熊本県では「建設産業の力」として、建設産業の取り組みや業務内容を分かりやすく、かつ、正しく理解してもらうための取り組みを行っています。
普段我々が利用しているあの道もこの橋も、見ているダムもトンネルも、すべて建設産業の力で成り立っているのですが、なかなか「じゃどうやって作られているの?」までは想像がつかないものですよね。
そんなシンプルな疑問であったり、また、実際に体験できるイベント等も告知されているので
モノづくりが好き!という子供から大人まで要チェックです!
また今回お邪魔した滝室坂トンネルではHPにて工事の概要等の説明を行っていますよ。
トンネル工事ってどうやってるの?どんな工法なの?など気になるかたはぜひご覧ください。
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