みなさん「活版印刷」って知ってます?歴史の授業とかで出てきたと思います。印刷って、今ではインクジェットとかレーザープリンターとか機械によるものがほとんどなんですけど、歴史上初めて登場した印刷技術がこの「活版印刷」なんです。文字の形に切り抜いた版を組み合わせて、インクを付けて押していくことで、同じ印刷物を量産するものです。現在ではほとんど見られなくなりましたが、味やぬくもりがあることから好む人も多く、熊本にも少しだけですが現存しているんです。今回は御船町で活版印刷を続ける「池田活版印刷所」に行ってきました。
御船町の「池田活版印刷所」
御船町にある「池田活版印刷所」。城下町を思わせるその建物はそれだけでこの場所の歴史を証明してくれます。
なにせ、昨年創業130年を迎えた老舗で、今なお活版印刷を続ける数少ない事業所なんです。
正直にいえば、活版印刷って、知ってはいるけど実物を手にしたことってあんまりないんですよね。どんな風に印刷しているのかも見たことありません。
中に入ると、まるでタイムスリップしたかのような昔ながらの雰囲気でした。活版印刷に使う道具はもちろん、他の調度品も昔から大切に使われているのがよく分かります。
インクの香りが漂って、なんだかノスタルジック。
今回お話を伺ったのは、池田活版印刷所の5代目・吉田典子さん。もともとは小学校の先生でしたが、定年退職を機に家業を継ぎました。
お会いして、そうそう、活版印刷の魅力を知ったのですが、その理由が
最初にいただいた、この名刺!!めちゃくちゃカッコイイ!!!!
これも活版印刷で刷ったもので、実物を見ると重みがありながらも優しい感じがするんです。
この名刺、ほしいもん。
ロゴの部分は自慢の「活版コード」。文字をQRコードのように組み合わせてデザインしたものです。
活版印刷ってどんな風にしてるの?
まず、気になったのは棚に並ぶ謎の物体。これ、ひとつひとつに文字が彫られた版なんです。
1文字ずつ刻まれた文字を探して、10万本以上あるなかから一つ一つ集めて組み合わせていきます。
これも作っているところがかなり少なくなり、今では横浜から取り寄せているそうです。
数も凄いし、サイズもさまざまなので、私がやるとちょっと集めるだけで1日が終わってしまいそう。
集めた文字を組み合わせて、版を作っていきます。見ていて思いましたが、これ、途方も無いです。
吉田さんはほとんど未経験で跡を継ぎました。不安もあったそうですが、先代の頃から50年以上勤めているスタッフとともに活版印刷を続けています。
「私以上に、活版印刷の魅力を知っている人から、逆に魅力を教えてもらっているくらいなんですよ」と笑いながら話してくれました。
現在は、歌集の印刷の依頼を受けて作成中。
床に並べられているのは、歌集に使われる文字を組んだ版。これを印刷していくそうです。
今回は名刺の印刷風景を見学させてもらいました。1つ1つ手作業で印刷していきます。
がっしゃん、がっしゃん、と心地いい音を立てながら名刺が刷られていきます。
印刷って、デジタルなイメージが強いですが、思っていた以上にアナログでした。
だからこそ、ムラが出たりして温もりが感じられるのですが「先代はもっと上手だったので、私みたいにムラはなかったんですよ」と笑われていました。
個人的には、その手作り感がかけがえないものだと思います。
名刺や年賀状が人気 カレンダーや原稿用紙なども
こちらの機械は60年以上使っているもの。すごい長持ちですよね…。
依頼で多いのは、名刺。特に先程の活版コードを用いたものが人気で、普通の紙だけではなく和紙や木材を使ったものに印刷することもあるそうです。
あとは年賀状なんかも毎年刷っていますし、「結婚式の席札を」なんて依頼もあったそう。1つ1つ版を変える必要があるので高価になると、印刷体験を勧めそこで自作していただいたこともあるそうです。
他にもカレンダーや絵葉書、原稿用紙なども印刷されています。
手に取ると味わいのある楷書やインクのにじみ、凹凸など本当に温もりを感じることができます。
手書きではないけれど 同じくらいの温もりで
大量生産できてしまうこの時代だからこそ、手間のかかる昔の製法で作られたものの価値ってどんどん増しているような気がします。
手書きではないけれど、まるで手書きの手紙でももらったかのような温もりを感じます。
印刷物も実際に触れてみると、ここまで違うのかと驚きますよ。
熊本にも残っている活版印刷。ぜひとも今後も大切に守っていきたいですね。
池田活版印刷所
住所 | 熊本県上益城郡御船町御船795 |
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営業時間 | 9:00~17:00(訪問の際は事前にご連絡を) |
定休日 | 土日祝(応相談) |
電話番号 | 096-282-0069 |
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