新型コロナウイルス感染症の拡大による外出自粛にともなって、印象く業界が大打撃を受けています。肥後ジャーナルでも、テイクアウトを中心とした飲食店の紹介を続けていますが、「もう限界!」という飲食店の声も多く聞かれます。そこで、今回はオンライン会議ツールzoomを使い、飲食店経営者の方々に現状と今後の展望を聞きました。(取材日4月30日)
今回の参加者
今回、座談会に参加したくださったのはこの方々。
リストランテ・ミヤモト 宮本健真さん
辛島町でイタリア料理のお店を営んでいます。4月4日から1日2組限定で営業していましたが、現在はテイクアウトのみ販売しています。常連の皆様を中心ご利用いただいていますが、売上も4~5割減少しています。
天外天 小田圭太郎さん
天外天の小田です。安政町と熊本駅の2店舗ラーメン店を経営していますが、現在はどちらも休業中。安政町の本店で、冷凍のスープと麺を用意して、お持ち帰りとして販売しています。
tutti 中村龍也さん
駕町通りで、tuttiというイタリア料理店を開いています。基本的にはテイクアウトのみで営業しています。もともと、生産者から直接仕入れた旬の食材を使ったフェアを毎月開催していて、それをテイクアウトでも提供しているので、常連さんを中心にご予約いただいて、なんとか3割減といった状況です。
Voyager 田島巳起子さん
九品寺でVoyagerというバーをやっていますが、今はテイクアウト専門で九品寺バーガーを売り出しています。よろしくお願いします。
肥後ジャーナル編集部 山田
食べることが至高の喜び。司会の肥後ジャーナル編集部の山田です。
「半年後には今あるラーメン屋の半数が無くなっている可能性も」
新型コロナウイルス感染症の影響で、飲食店のみなさんは大変な状況だと聞いています。生の声を聞かせてくだい!
天外店は、街中の店舗はカウンターで肩を寄せ合うような形態でしたので、早い段階で休業しました。熊本駅の店舗も緊急事態宣言と同時に休業していますので、本店での冷凍販売だけ営業しています。
行列のできる天外天、昨年3月の様子
天外天さんって行列のイメージが強いので、閉まっているのって正直少しさみしいです。ラーメンの冷凍って難しそうですけど、すぐに用意できたんですか?
以前、東京に向けて通信販売してたので、ノウハウがあったんですよ。売上でいうと、通常時の2割に満たないような状況です。
えっ、2割未満って、大丈夫なんですか??
ラーメン業界では、基本的にお客さんに来てもらうお店ですから、今借りているお金がなくなると、話を聞いていると倒産や自己破産だなってお店も結構あるんですよ。でも、その現状は普通のお客さんには伝わっていないと思います。半年後には今あるラーメン屋さんが半分以上なくなっている可能性があるんです。
!?!? そんなに影響が大きいんですね…。
売上減少続く、テイクアウトは活路足りうるか?
他のみなさんのお店は、どんな状況でしょうか?
テイクアウトをはじめたリストランテ・ミヤモト
リストランテ・ミヤモトでは、現在、テイクアウトのみで営業していますが、売上は4~5割減少しています。常連の皆様からかなりご注文をいただいているので、助けられています。
tuttiも予約を受けて、テイクアウトを提供していますが、常連のみなさんやSNSで見てくださった方に足を運んでいただいています。やはり売上減少は避けられませんが、やらなければゼロなので、なんとかやっています。
こういうときに、常連さんの存在ってすごくありがたいですよね。Voyagerさんはどうでしょう?
バーはそれこそ密が売りのお店なので、もちろん休業していました。テイクアウトで料理を提供するにしても、お酒が中心のお店ですから、専門の料理人もいるわけではありません。悩んだ結果、「九品寺バーガー」を作り、ハンバーガー専門店として頑張っています。
確かにバーって、普段は三密だからこそ楽しめるお店ですもんね…。やはり、みなさんテイクアウトやってるんですね。
今はテイクアウトしかできませんが、早く本業のレストランに戻りたいな、と思っています。仕出し屋さんやお弁当屋さんの邪魔をするわけにもいきませんし。ですが、どんな形で再開していくのかは、しっかり考えていかなければなりません。
九品寺にあるクラフトビール専門のバー・Voyager
そうですね。続けるにしても、多角化していかないと難しいと思います。飲食だけじゃなくて加工品を販売しするとかリスクを管理していかないといけない。でも、いきなり投資したりはできないし、今はテイクアウトで提供するしかないんです。それさえも飽きられないように「あ、食べたいな」って思ってもらえるものを作り続けなきゃいけませんが、それも半年、1年と続くと限界がきますよね。
私たちは酒販免許を持っているので、面白いビールを仕入れてオンラインで販売したりテイクアウト専門のボトルショップを開いたりできるんじゃないかな、と考えています。もちろん、いまのカウンターにお客さんが集まるスタイルに未練がないわけではありませんし、閉店することも考えていませんが、雰囲気やイメージを踏襲した形での展開はいくらでもあると思います。
私は、バーって無くならないと思いますし、レストランだって必要です。デリバリー需要は増えると思いますが、同じ料理でも、例えば宮本さんの話を聞きながら、ワインを飲みながら、その空間で食べる料理とデリバリーは別物じゃないですか。なので、売り方を考えていかなければならないんですけど、飲食店にはいま、その余裕がないんです。余裕がないからこそ、バーが欲しいんですけど(笑)。
バーには相談しにくるお客さんも多いので、キャラを売りにしてオンラインバーなんかも良いかなって思っています。その時はお電話を(笑)。
時代の変化は以前から感じていて、熊本地震以降、準備もしていました。まさかこんな病気が蔓延するとは思ってていませんでしたけど。料理人にとって、お店を持つことが夢である時代から変わっていっています。私自身、チーズやハムの加工、ECのコンサルタントなどお店にいながらできる仕事を始めています。次にお店を移転するときは機械化できるとこは機械化して、効率化していこうとも考えていたところでした。
こう言っちゃなんですか、こんな状況でも…だからこそかもしれませんが、皆さん思った以上に真剣に考えててビビりました。
売り方でいえば、時代を遡っている気はしますけど、車でラーメンの移動販売を考えています。昔、チャルメラ鳴らしながら走っていたようなやつ。
!?!?!?
テイクアウトだけでは限界?これからの飲食店は?
ちょっと待ってください。天外天が?移動販売??個人的に激アツです。見かけたら絶対走って追いかけます。
私も行きます!!
面白い!
保健所に相談したら、できないわけではなさそうなので、今準備を進めています。テイクアウトだけでは限界がきますから。だったら、自分たちからお客様のところに出向くしか無いですよね。
家や職場の近くで天外天が食べられるって夢みたいです。もちろん、街中で酔っ払って食べる天外天も最高なんですけど。
だったら、私達が酔っ払ってそうなところまで行きますよ(笑)。
この10年くらいって、飲食店にとって割と良い時代だったと思うんですよ。県外や海外からのお客さんが増えたんです。地球上の距離がすごく近くなって頑張ったらどこからでも来てくれる。反面、3月も海外からのお客さんが全部キャンセルで、それを助けてくれたのが常連さんだった。グローバル化してきた時代から、そういう地域の方々や常連さんのような身近な人達を大切にする時代に戻るんじゃないかな、と思います。
だから、小田さんのような昔、僕たちが屋台で食べていたラーメンのような発想ってすごく良いと思うんです。
バーもあり方が変わるかなって思います。今後、いつこんなことが起きても営業できる備えはしておかないと。人と関わることは大切なことですので、オンライン上でもそれが叶うサービスが増えてくるのではないかな、と思います。オンラインのバーもそうだし、できることからやっていくしかありません。
本当に、背水の陣というか下がれない状態なんです。下がっても進んでも辛いなら、前に進みたいと思うし、どうせなら元気よく進みたいんです。こんな風にみなさんと話す中で、建設的な意見が出てくるのって、本当に素敵なことですよね。
みなさん、ありがとうございます。みなさんの危機感や頑張りっている姿が少しでも、多くの消費者や、悩んでいる飲食店の方にも届くように肥後ジャーナルでも今後しっかり取材していきますね!
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